タイトル:僕が最初に作ったロゴは、たぶん「失敗作」だった。
独立して、いちばん最初に受けたロゴの仕事のことを、今でもよく思い出す。
相手は、地元で長くやっている小さな工務店の社長だった。「古くさいロゴを、今っぽく変えたい」。依頼はそれだけ。僕は張り切った。トレンドを調べて、きれいな書体を選んで、洗練された配色で、自分でも気に入るロゴを作った。社長も「おお、かっこいい」と言ってくれた。納品して、僕は満足していた。
半年後、たまたまその工務店の前を通った。看板は、新しいロゴに変わっていなかった。古いままだった。
気になって連絡してみると、社長は申し訳なさそうにこう言った。「いや、かっこいいんだけどね。なんか、うちっぽくない気がして」。
頭を殴られたような気がした。かっこいいのに、うちっぽくない。──そのとき僕は、いちばん大事なことを飛ばしていたんだと気づいた。
僕は「古いロゴを新しくする」ことしか考えていなかった。でも社長が本当に欲しかったのは、新しさじゃない。「この会社は何者なのか」が、ちゃんと外から見えることだったんだ。その工務店は、三代続いていた。先代から受け継いだ「手間を惜しまない」という流儀があった。地元の家を、何十年も直し続けてきた誇りがあった。──僕はそれを、一度も聞いていなかった。聞かずに、形だけ今っぽくしていた。
だから、うちっぽくなかった。当たり前だ。中身を知らない人間が作った“きれいな何か”でしかなかったから。
僕はもう一度、社長に頭を下げて、今度は半日かけて話を聞かせてもらった。なぜこの会社を継いだのか。続けてきて、いちばん嬉しかったことは何か。本当はどんな工務店だと思われたいのか。社長は最初こそ照れていたけれど、だんだん前のめりになって、最後にはこう言った。「こんなこと、人に話したの初めてだよ」。
その話をもとに作り直したロゴは、派手じゃなかった。むしろ、最初の案より地味だったかもしれない。でも社長は、今度は迷わず看板を架け替えた。「これだよ、これ。うちはこういう会社なんだ」と。
あのとき僕が学んだのは、デザインの本当の順番だ。
形を新しくするのが仕事じゃない。その会社が何者かを言葉にして、それがいちばん伝わる形を選ぶ。中身が先で、形はあと。順番を逆にすると、どんなにきれいでも“うちっぽくない”ものができあがる。
それ以来、僕はロゴの相談を受けても、すぐにスケッチを始めない。まず、その会社のことをひたすら聞く。「早くデザインの話を」という顔をされても、そこは譲らない。あの工務店の看板が架け替わらなかった日のことを、忘れたくないからだ。
きれいなデザインは、もう世の中に溢れている。でも、「うちはこういう会社だ」と社長が胸を張れる一枚は、その会社の話を本気で聞いた人間にしか作れない。僕はそれを、未来まで効く経営資産だと思っている。
もしあなたが、「うちのよさが、外にうまく伝わっていない」と感じているなら。その正体を一緒に言葉にして、形にするのが、僕の仕事です。まずは気軽に話を聞かせてください。→[HP相談フォーム / LINE]

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