「毎日投稿しようと決めたんです。三日で止まりました」
そう言って笑う社長は、多い。だいたい、少し恥ずかしそうにしている。続けられなかった自分の意志の弱さを責めている顔だ。
でも僕は、意志の話だとは思っていない。
発信が続かないのは、根性でも、時間でも、文章のうまさでもない。もっと手前に、はっきりした原因がある。
「自社が何者か」を、一文で言えていない。
これだけだ。今日は、その話をしたい。
「ネタがない」の正体
続かない社長に「なんで止まっちゃうんですか」と聞くと、ほぼ全員が同じことを言う。
「書くことが、なくて」
面白いのは、その人たちが、話すとめちゃくちゃ面白いことだ。現場の苦労も、こだわりも、断った仕事の話も、聞けばいくらでも出てくる。ネタが無いわけがない。毎日、山ほど起きている。
じゃあ、なぜ「書くことがない」になるのか。
投稿のたびに、ゼロから「今日は何を書こう」と探しているからだ。
昨日の商談、今日の失敗、来週の段取り――目の前には材料が溢れているのに、「これは発信に使えるネタか?」を判断する“ものさし”が無い。だから、全部が「なんか違う気がする」で流れていく。
ネタが無いんじゃない。ネタかどうかを判断する軸が無いんだ。
軸が無い状態での発信は、毎日、白紙のノートを渡されて「何か書け」と言われているのと同じだ。そりゃ、三日でしんどくなる。
Before:軸がないと、発信は「探す」作業になる
以前、地元で20年やっている工務店の社長から相談を受けた。
「うちも情報発信しなきゃと思って、始めては止めて、を三回くらい繰り返してます」と。
投稿を見せてもらうと、こうだった。
・今日は現場で基礎の打設をしました
・スタッフ紹介です
・お客様の声をいただきました
どれも嘘じゃない。でも、他の何百社の工務店が書いても、まったく同じ文章になる。読んだ人の中に、この会社の輪郭が何も残らない。そして本人がいちばん、書いていて手応えが無い。だから続かない。
「何を書けばいいか分からないんです」と社長は言った。
それは当然だった。この会社が“何を大事にしている会社なのか”が、社長自身の中でも一文になっていなかったからだ。
掘り当てた一文
僕がやったのは、投稿のテクニックを教えることじゃない。いつものように、半日かけて社長に質問し続けた。
なぜこの仕事を継いだのか。断った仕事はあるか。どんなクレームがいちばん悔しかったか。
話の途中で、社長がこう言った。
「うちは、“建てて終わり”の会社が嫌でこの仕事を続けてるんですよ。30年住んで、はじめて答え合わせができる仕事だから」
これだ、と思った。
そこから一緒に言葉を削り、こう置いた。
「30年後に“建ててよかった”と言われる家を建てる工務店」
これは飾りのキャッチコピーじゃない。この会社の“判断の軸”だ。
After:軸が決まると、発信は「切り出す」作業になる
一文が決まってから、社長の発信は変わった。
同じ「基礎の打設をしました」でも、こうなる。
「見えなくなる部分ほど、丁寧にやります。30年後に効いてくるのは、完成写真に写らないところだから」
同じ「お客様の声」でも、こうなる。
「引き渡しから10年経ったお宅へ点検に。“やっぱりここにして良かった”の一言のために、この仕事をしています」
ネタを新しく探したわけじゃない。日常は同じだ。
違うのは、「30年後」という軸に、目の前の出来事を照らすだけで、書くことが自動的に見つかるようになったこと。発信が「探す」から「切り出す」に変わった。
社長は言った。「不思議なんですけど、何を書くか迷わなくなりました」
迷わなくなれば、続く。続けば、伝わる。半年後、「うちの家づくりの考え方に共感して」という問い合わせが、初めて発信経由で来た。
だから、順番を間違えない
発信が続かない社長に、僕は文章術をすぐには教えない。
先にやるべきは、投稿頻度を上げることでも、バズる型を覚えることでもない。
「うちは、誰の、何を、どう良くする会社なのか」を、一文にすること。
軸が一本通れば、ネタは探すものじゃなくなる。日常のほうから、勝手にネタが立ち上がってくる。テクニックは、そのあとでいい。
もし、あなたが「発信しなきゃと思うのに続かない」ともどかしく感じているなら。
足りないのは、たぶん根性でも時間でもない。まだ言葉になっていない、あなたの会社の“一文”だ。
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