「うちの強みは技術力です」と言った瞬間、強みは消える ― 中小企業の“違い”の見つけ方

「うちの強みは技術力です」と言った瞬間、強みは消える ― 中小企業の“違い”の見つけ方

Kenta Torii

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「うちの強みは技術力です」と言った瞬間、強みは消える ― 中小企業の“違い”の見つけ方

「御社の強みは何ですか」

この質問を、僕はもうほとんど使わなくなった。効かないからだ。

聞くと、たいてい似た答えが返ってくる。技術力。品質。対応の早さ。お客様第一。小回りが利くこと。──どれも嘘ではない。実際にその会社は、そこに誇りを持って仕事をしている。

でも、同じ質問を同業10社にしたら、たぶん10社とも同じことを言う。

みんなが言えることは、強みではない。それは、その業界で生き残るための最低条件だ。最低条件を強みとして掲げてしまうと、お客さんから見たときに違いが見えない。違いが見えなければ、比較の軸は価格しか残らない。「いい仕事をしているのに、相見積で負ける」の正体は、だいたいここにある。

強みは、自社の中には無い

強みという言葉は、なんとなく「自分の内側にある能力」を指しているように聞こえる。だから多くの会社が、社内で会議を開いて、自社の良いところを付箋に書き出そうとする。

僕はこのやり方で強みが出てきた場面を、ほとんど見たことがない。

理由はシンプルで、強みは比較の中にしか存在しないからだ。速いか遅いかは、他と並べて初めて決まる。丁寧かどうかも同じ。自社だけを見つめても、比較対象がないので「たぶん普通よりはいい気がする」までしか出てこない。そして「普通よりはいい」は、言葉にすると全部同じになる。

だから強みの言語化は、自己分析ではなく、比較の作業だ。「他はそうしないのに、うちはそうしてきた」という差分を探す作業だと言い換えてもいい。

僕が代わりに聞く3つの問い

強みを直接聞くのをやめて、僕は次の3つを聞くようにしている。

① 断った仕事はありますか。それは、なぜ断ったんですか。

これは判断基準を掘る問いだ。何を断るかは、何を大事にしているかの裏返しになる。「安すぎたから」ではなく「その値段でやったら、うちのやり方ができないから」と答えが出てきたら、その“うちのやり方”が本体だ。

② 儲からないのに、やめずに続けていることはありますか。

これは思想を掘る問いだ。損得だけで判断していれば、とっくに消えているはずのもの。それが残っているなら、そこには金勘定より優先されている何かがある。会社の価値観は、こういう不合理な習慣の中にいちばん濃く出る。

③ お客さんに「他と違う」と言われたとき、何を褒められましたか。

これは市場からの評価を拾う問いだ。自分では当たり前すぎて数えていないことが、外からはいちばん違って見えていることが多い。褒められた記憶は、他社との比較を経た他人の言葉なので、そのまま差分のデータになる。

「経営が下手な話」が、いちばん強みだった

先日、ある建設会社でこの3つを聞いた。

①で社長が挙げたのは、繁忙期に来た大口の仕事を断った話だった。理由は「今の人員で受けたら、既存のお客さんの工期に穴が開くから」。

②では、少し照れながらこう言った。「うちは、工期を守るために利益を削ることがあるんです。追加で職人を入れてでも、約束した日には終わらせる」。社長本人は、これを自慢として話していない。むしろ「経営が下手な話ですけどね」と苦笑いしていた。

③で出てきたのは、あるお客さんからの一言。「おたくは、遅れる時に遅れる前に言ってくれる」。

3つ並べた時点で、もう答えは出ていた。この会社が譲ってこなかったのは、品質でも技術力でもない。**「約束した日程を、経営判断より上に置く」**という一線だ。しかも、それを断る・削る・先に伝えるという具体的な行動で、何年も証明してきた履歴がある。

僕らが作った言葉は、こうなった。

利益より、約束の日を守る。

見た目は地味だ。かっこよくもない。でも、同業でこれを本気で掲げられる会社はそう多くない。掲げた瞬間に、繁忙期に無理な受注ができなくなるからだ。言い切ると自分の首が締まる言葉こそ、他社が真似できない強みになる。

この一行を軸に、会社案内も、求人票も、現場の朝礼も組み替えていった。半年後、社長から「値段の話から入る問い合わせが減った」と連絡をもらった。効いたのは、うまい表現ではない。すでに会社の中にあった判断基準を、外から見える場所に置き直しただけだ。

強みは、探すものではなく、決めるもの

ここまで書いておいて逆のことを言うようだけれど、最後は「決める」しかない場面が必ず来る。

3つの問いで差分が2つも3つも出てくることはよくある。全部載せたくなる。でも全部載せた瞬間に、また「技術力と品質と対応の早さ」に戻ってしまう。だから最後は、経営者が「うちはこれで選ばれる会社になる」と一つ選ぶ。選ぶというのは、他を捨てるということだ。

強みの言語化が難しいのは、言葉を探すのが難しいからじゃない。捨てる決断が要るから難しい。逆に言えば、そこさえ越えれば、言葉自体は既に会社の中にある。断った仕事の中に、続けてきた不合理の中に、お客さんが褒めてくれた一言の中に、もう転がっている。

まずは、この週末にでも一つだけ。

「儲からないのに、うちがやめずに続けていることは何だろう」

そこに、たぶんいちばん大事なものが埋まっている。

COLORSDRIP では、中小企業の思想・価値・目指す姿を言語化し、デザインによって“未来の経営資産”に変えるお手伝いをしています。「うちの強みって、結局なんだろう」と手が止まった方は、まず気軽に話を聞かせてください。→ [HP相談フォーム / LINE]

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デジタル領域が得意なデザイナー。日頃から海外のトレンド情報や最新技術をインプットし、お客さまに価値を届けます。

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