「ホームページをリニューアルしたい」の9割は、サイトの問題じゃない

「ホームページをリニューアルしたい」の9割は、サイトの問題じゃない

Kenta Torii

Knowledge

「ホームページをリニューアルしたい」の9割は、サイトの問題じゃない

「ホームページ、そろそろリニューアルしたくて」

この相談を、僕は月に何度か受ける。そして、そのたびにほとんど同じ質問を返している。

「今のサイト、具体的に何が困ってますか」

ここで返ってくる答えが、その後の数百万円の使い道を決めると言っていい。

まず、作り替えたほうがいい場合をはっきり言っておく

自分の仕事に引き寄せる前に、正直なことを書く。本当に「器」の問題であるケースは、確かにある。

スマホで見るとレイアウトが崩れる。表示に何秒もかかる。CMSが古くて自分たちで更新できない。問い合わせフォームが実は動いていなかった。SSL対応ができておらず警告が出る。──こういうのは技術的な不具合なので、直せばそのまま改善する。この場合は、コンセプトがどうこうと言う前に、さっさと作り替えたほうがいい。制作会社に頼めば、それなりの金額で、確実に良くなる。

問題は、そうじゃないほうだ。

「なんとなく古い」の下にあるもの

相談の入り口でいちばん多いのは、この言い方だ。

「なんとなく古い気がして」
「同業他社と比べると、見劣りしていて」

この言葉を、そのまま受け取ってはいけない。掘っていくと、下にはたいてい別の悩みが埋まっている。

・問い合わせが、そもそも来ない
・来ても、価格の話しかされない
・求人を出しても、応募が集まらない
・営業先で「御社のサイト見ました」と言われたことがない

つまり、困っているのは見た目ではなく、成果なのだ。見た目は、成果が出ない理由として最初に思いつく容疑者にすぎない。

ここを取り違えたまま発注すると、何が起きるか。

Before:きれいになったのに、何も変わらなかった

以前、僕のところに「2年前にサイトをリニューアルしたばかりなんですが」と相談に来た会社があった。従業員20名ほどの製造業。前回のリニューアルには、それなりの金額をかけている。

見せてもらったサイトは、正直きれいだった。写真も撮り下ろしで、スマホでも崩れない。制作会社の仕事としては、まっとうだったと思う。

ただ、書いてある言葉を読んで、引っかかった。

トップに「確かな技術力で、お客様の期待に応えます」。会社紹介に「創業以来、品質にこだわり続けてきました」。サービス紹介は、加工方法が箇条書きで並んでいる。

どれも嘘ではない。けれど、同業の会社のサイトを5社ぶん開いて並べたら、どれがどの会社か分からなくなる文章だった。

社長に訊いた。「この文章、前のサイトからどれくらい変えました?」
返ってきた答えは、「ほとんどそのままです。文章は、うちで用意したものを流し込んでもらいました」。

ここに、すべてがあった。

デザインは新しくなった。でも、誰に・何を言うかという判断は、一度も更新されていなかった。器だけ替えて、中身は前のまま。だから、届く相手も、来る問い合わせも、前と同じだったのだ。

制作会社が悪いわけではない。「サイトを作る」という発注に対して、サイトを作った。それだけのことだ。中身を決めるのは、本来は発注側と、そこに踏み込む相手の仕事だった。

After:やったのは、デザインより前の工程

その会社と最初にやったのは、デザインの話ではない。半日かけて、社長と工場長にひたすら質問した。

・直近で受注した仕事のうち、いちばん利益が出たのはどれか。なぜ取れたのか
・逆に、断った仕事はあるか。なぜ断ったのか
・お客さんが最後に発注を決めた瞬間、何と言っていたか

3つ目の質問で、工場長がぽつりと言った。

「"図面の段階で、ここは無理だって言ってくれるのは御社だけ"って言われたことはありますね」

これだ、と思った。

この会社の価値は「確かな技術力」ではなかった。受ける前に、できないことを正直に言うことだった。だから手戻りが起きない。だから、急ぎの案件ほど戻ってくる。断った仕事の話にも、同じ一線が通っていた。

サイトに載せる言葉を、そこから組み直した。トップの一文は「確かな技術力で〜」をやめて、図面段階で無理を伝える、という自社の流儀をそのまま書いた。サービスページには加工方法の羅列ではなく、「相談から納品までのどこで、何を確認するか」を並べた。

デザイン自体は、前のサイトの構造をかなり流用している。作り替えたのは、器ではなく中身のほうだ。

半年後、社長から聞いた変化はこうだった。問い合わせの件数は、劇的には増えていない。けれど、最初の連絡が「見積もりください」から「相談したいことがあって」に変わった。そして、価格だけを比べる問い合わせが目に見えて減った。

数字が何倍になった、という話ではない。ただ、来る人の質が変わった。僕は、これがリニューアルの本来の成果だと思っている。

発注する前に、一度だけ確かめてほしいこと

もしいま、複数の制作会社から見積もりを取っている最中なら、一つだけ自問してみてほしい。

「新しいサイトに載せる言葉は、今と違うものになりますか?」

ここに即答できるなら、進めていい。器の問題がはっきりしているか、中身の判断がすでに社内で終わっている、ということだからだ。

答えに詰まるなら、順番が逆になっている可能性がある。デザインを決める前に、誰に・何を・どう思われたいかを決める工程が、まだ残っている。

サイトは、会社の判断を映す鏡だ。判断が変わっていないのに鏡だけ磨いても、映るものは変わらない。逆に言えば、判断さえ言葉になっていれば、その言葉は、サイトだけでなく会社案内にも、営業トークにも、求人票にも、そのまま効いていく。何年も効き続ける。

だから僕は、ホームページの相談を、ホームページの話として受けない。その会社が何者かを言葉にする工程として受ける。時間はかかるし、面倒でもある。でも、2年後にもう一度同じ相談をしなくて済むほうが、結局は安い。

COLORSDRIP では、中小企業の思想・価値・目指す姿を言語化し、デザインによって“未来の経営資産”に変えるお手伝いをしています。「うちの場合はどうだろう?」と思った方は、まず気軽に話を聞かせてください。→ [HP相談フォーム / LINE]

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デジタル領域が得意なデザイナー。日頃から海外のトレンド情報や最新技術をインプットし、お客さまに価値を届けます。

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